スマホにだけ映る、謎のしま模様
なぜスマホでLEDビジョンを撮ると、しま模様が映るのか?
ライブ会場やイベントホール、街頭などに設置された大型LEDビジョン。肉眼では色鮮やかで美しい映像が流れているのに、スマホを取り出して撮影した途端、画面に黒い帯が現れ、ゆっくりと動き出す——。「LEDビジョンが壊れているのでは?」と思った経験はありませんか?
ところが、スマホを下ろして自分の目で確かめてみると、映像は何の問題もなくきれいに表示されています。
このしま模様は、LEDビジョンの表示方式とスマホカメラの撮影方式のずれによって生じるものです。LEDビジョンは目に見えない速さで点灯を切り替え、スマホカメラの多くは映像を上から順番に読み取っています。そのタイミングが合わないことで、肉眼では見えない明暗の差が、黒い帯となって映り込むのです。
一般に「スキャンライン(走査線)」と呼ばれるこの現象は、なぜ起こるのでしょうか。
今回は、多くの撮影者を悩ませるこのしま模様の正体を、分かりやすく解き明かします。
スキャンライン現象はなぜ起こる?
【現象】

画面に1本〜数本の明暗の帯が現れ、それが上または下へゆっくりと流れていきます。昔のアナログテレビのノイズのようにも見えますが、不思議なことに肉眼では見えず、レンズを通した時だけその姿を現します。
その秘密:時間がズレている
実は、多くのLEDディスプレイでは、画面全体を一斉に点灯させているわけではありません。何万個ものLEDを効率よく制御するため、複数のグループに分け、順番に高速で点灯・消灯を繰り返しています。この動作は非常に高速なため、人の目には常に光っているように見えます。
一方、多くのカメラは、スキャナーのように上から下へ1行ずつ、イメージセンサーの情報を読み取っています。つまり、LEDの「順番に点灯するリレー」と、カメラの「順番に読み取るリレー」という、2つの独立した動きが同時に進んでいるのです。
この2つのタイミングがずれると、
- LEDが点灯している瞬間に読み取られた部分 → 明るく写る
- LEDが消灯している瞬間に読み取られた部分 → 暗く写る
その結果、明るい帯と暗い帯(スキャンライン)が映り込みます。
さらに、LEDの点灯周期とカメラの読み取り周期はわずかに異なるため、しま模様が画面上をゆっくり流れているように見えるのです。
🎛️ 体験してみよう:スキャンライン・シミュレーター
下のボタンをクリックして、LED画面のリフレッシュレートやスキャン方式、カメラのシャッタースピードを切り替えてみてください。設定の組み合わせによって、スキャンラインの見え方がどのように変わるかを確認できます。
LED撮影スキャンラインシミュレーター
シミュレーターは、設定の組み合わせによる見え方の違いをイメージするためのものです。実際の機種選定については、お気軽にお問い合わせください。
撮影時のスキャンライン対策
仕組みがわかったところで、次は実際の撮影方法を見ていきましょう。LEDビジョンをきれいに撮影したいときは、以下の方法を撮影条件に応じて使い分けてみてください。
静止画を撮影するとき
プロ/マニュアルモードに切り替える
対応機種やカメラアプリでプロ/マニュアルモードに切り替え、シャッタースピードを手動で調整できる状態にします。
シャッタースピードを調整する
まずは1/50秒や1/60秒を目安に、スキャンラインが目立たなくなる値までシャッタースピードを少しずつ調整します。
シャッタースピードを遅くすると、1回の露光中に複数の点灯周期の光が取り込まれ、明暗差が平均化されます。その結果、しま模様が目立ちにくくなります。
動画を撮影するとき
シャッタースピードを遅くしすぎない
動画撮影では、シャッタースピードを遅くしすぎると、動く被写体のブレ(モーションブラー)が目立ち、輪郭がぼやけて見えます。しま模様を抑えながら自然な動きを保つには、フレームレートとのバランスを見ながら調整する必要があります。
フレームレートを基準に調整する
まずはフレームレートの約2倍を目安に、30fpsなら1/60秒、60fpsなら1/120秒に設定します。1/120秒を選べない場合は、近い値の1/125秒を試します。そのうえで、スキャンラインの見え方を確認しながら、シャッタースピードを微調整します。
30fpsに対する1/60秒、60fpsに対する1/120秒は、自然なモーションブラーを得るための一般的な目安です。スキャンラインを抑えるにはLED側の点灯周期との関係もあるため、フレームレートに合わせるだけで模様が静止するとは限りません。

ここまで見てきたように、スキャンラインはLEDビジョンの故障ではなく、LEDの点灯とカメラの読み取り、そのタイミングのずれによって現れるものです。
レンズに映る、瞬く間に現れては消える不完全な揺らぎ。
それは、人の目では捉えられない「光の足跡」なのです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。





