デジタルサイネージの歴史
看板から空間をつくる映像へ
看板(サイン)の起源は古く、古代ローマの街にも、店の存在や扱う商品を知らせるための表示がありました。店先の壁に文字や絵を描き、通りを行き交う人々に何を売っているのかを伝えていたのです。素材や表現方法は時代とともに変化してきましたが、情報を伝え、人の目を引くという看板の基本的な役割は、約2,000年前から現代まで変わっていません。

時代が進むと、電気を使ったネオンサインや電光掲示板が登場します。光によって遠くからでも目立つようになり、文字を点滅させたり、表示内容を切り替えたりできるようになりました。
一方、テレビの普及とともに、街頭に設置されたテレビに人々が集まり、映像を共有する光景も生まれました。看板とは異なる目的で使われていたテレビですが、街の中で多くの人に映像を届けるという、新しい情報伝達の形を示していました。

やがて、テレビは広告や情報を表示する装置としても使われるようになります。1980年代には、ブラウン管テレビを店舗に設置し、商品の宣伝や案内に利用する事例が登場しました。映像を使った看板、現在のデジタルサイネージにつながる動きです。
1990年代になると、プラズマディスプレイなどの薄型画面が登場し、商業施設や空港、大型店舗などで映像を使った広告が広がっていきます。画面を広告媒体として販売し、収益を得るビジネスも発展しました。
2000年代に入ると、液晶ディスプレイの性能が向上し、価格も下がり始めます。さらにインターネットの普及によって、離れた場所にある複数の画面へ、まとめて映像や情報を配信できるようになりました。
ポスターを貼り替える代わりに、データを送る。時間帯や場所に応じて表示内容を変える。デジタルサイネージは、情報を柔軟に管理できるメディアへと進化していきました。

同時に、表示装置そのものも多様化していきます。LEDビジョンの高精細化や大型化が進み、曲面に沿って設置できるもの、背景が透けて見える透過型ディスプレイ、柱や建物の形状を生かした立体的な映像表示など、画面の大きさや形にとらわれない表現が可能になりました。
小型の案内板から、駅や空港の情報表示、店舗の電子メニュー、街頭の大型LEDビジョンまで、デジタルサイネージの利用範囲は大きく広がりました。
現在
さらに、タッチパネルやセンサーを組み合わせることで、見る人の操作や動きに反応する装置も登場しています。
情報や広告を表示するだけでなく、映像によって空間の印象を変えたり、建築と一体化した演出を行ったり、人が参加する体験を生み出したりすることもできるようになりました。
情報を表示するための画面から、空間そのものの価値をつくるための装置へ。

デジタルサイネージは、表示技術の進化とともに、その役割と可能性を広げ続けています。


